ガラスを素材とした技法には、「宙吹き」、「バーナーワーク」、「切子」、「サンドブラスト」、「グラヴィール」などがありますが、私が制作に取り入れているのはパート・ド・ヴェールという電気炉(窯)で焼成する鋳造法になります。最近ではこれを基本にしながら異なる温度域での焼成と研磨を行いながら仕上げています。

 

 

♦︎ パート・ド・ヴェール(Pâte de verre)

 

パート・ド・ヴェールはフランス語で「ガラスの練り粉」という意味になります。

粘土や蝋(ロウ)などを原型に鋳型を作り、ガラスの粉を詰めて型のまま窯の中で熔かす鋳造成形法になります。粉砕した粉状又は粒状のガラスに色のガラスの粉を混ぜ生地を作りますので、豊富な色数、濃淡やグラデーションの表現が可能になります。また焼成中、粉や粒どうしが熔ける際に隙間の空気を閉じ込める為、細かな泡が生まれます。この泡の大きさと数によって透明度の調整を行うことが出来、パート・ド・ヴェール特有の光を含む柔らかい雰囲気のガラス作品を作ることができます。ゆっくりと冷ました後、鋳型から取り出し研磨をして仕上げます。

 

古くはメソポタミア時代から伝わる技法ですが、量産に不向きなことから衰退消滅してしまいました。1880年代のアールヌーヴォー期にフランスの陶芸家アンリ・クロによって復活し、同時代の作家たちによって研究制作されたことで復興を遂げましたが、それぞれの作家が秘法にしたため再び消滅してしまい、「幻の技法」と呼ばれました。消滅・復興を繰り返し、現在では個人作家や教育機関で再現が試みられ普及していったことで、作家の表現手段として趣味の作品作りとして広く用いる技法となっています。